鬼無里の信州麻畳糸復元プロジェクト 2007年12月9日 
この復元された畳糸は嘉納治五郎氏 伝統柔道畳復元プロジェクトで利用されます。

 いにしえの時代から数々の伝説が伝えられている戸隠・鬼無里です。ここで畳糸生産量日本一だった
鬼無里村で約50年ぶりに畳糸作りを行っております。今回は麻はぎ・麻かき・麻積みを行い、来月行われる
糸撚り・糸合わせの作業の本番に備えます。


★麻はぎ(茎から皮を剥がす作業)

この作業は男達が担当した作業である。麻を煮て茎から皮を剥がすが、割りに簡単に皮は剥げるが
綺麗に剥すには熟練が必要となります。


★麻かき (剥ぎ取った皮から表皮などの余分な部分を剥ぐ作業)

この作業を怠ると糸は不純物が多く切れいた麻畳糸はできない。

●麻糸の原料が足りずに麻はぎ・麻かき(赤星)

畳糸の原料となる精麻をいくつかの地域から取り寄せるが、機械で引いたものだから、麻績みのときに
裂きにくい!ということがあって、自分たちで、麻茎から麻を剥いで、挽いたものが一番よいことになった。
よって、急遽、1束分の麻茎から麻はぎ・麻かきを実施しました。



★麻積み (麻繊維を繋いで糸状にする作業)

教えていただいている先生方は80歳代ちかくなり当時小学生や中学生の時の事を思い出しながら
作業を行っていただいた。麻積みは子供達や女性の仕事であった。また、各家へ出向き作業を行い
お婿さん探しにもなったという。

●麻績み(赤星)

精麻を1.5mmに手で裂いて、糸をつないでいく作業を主に実施しました。
今回は、麻績みをした麻糸をいれておく麻桶(オボケ)の新品を5つ復元。
隣の戸隠村で竹籠をつくっている方に製作を依頼しました。
これは、長野県の元気づくり支援金の助成金で復元できました!(すばらしい)


★麻合わせ機 (麻糸を撚りながら合わせていく作業)

約50年倉庫に眠っていたものを引っ張り出して歯車一つから修復、復元してぎこちないが動くようになった。

●ほぼ半世紀ぶりに、麻撚り機と糸合わせ機を動かしてみました。(赤星)

今回つかった道具は、鬼無里の風間さんが村長時代に処分しないで、保存していた
貴重なものです。(当時、捨てなくてよかった!)

麻績みした麻糸を熱湯にかけて、少ししてから、ホントは搾機で水を絞るらしいが、
そんな機械はないので、手で絞って水を抜いた。とにかく麻糸が湿った状態で、
ヨリ機にかけないとうまくいかないらしい。

麻撚り機は、足で踏んで、糸にヨリをかけて、紡錘に巻き取っていく機械です。
麻織物でつかわれる麻糸のヨリの強さと比べて、甘い(ゆるい)感じでした。
麻織物でつかわれるヨリ機にくらべる何倍も高速でヨリがかかっていくものでした。

地元の先生方が麻績みした糸だと調子よく、ヨリが掛かっていくが、
体験生が麻績みしたものは、途中で、ブチっと切れて、ヨリに絡まって、作業が中断。


ホントは、麻撚り機の1巻きにたったの5分で終わるところが50分ぐらいかかってしまった。
ブチっと切れると、絡まりをほどき、もう一度、ヨリ機に糸を通して、セッティングして、
切れたところをつなぎ直すという作業が追加される。絡まりが解けないときは、
ハサミで、適当なところを切って、そこからつなぎ直すというかなり時間のかかる作業が
発生した。

で、50年ぶりの作業だったので、麻撚り機のヨリの掛け方が実は反対であった。
反対だったから、ヨリがほどけて、糸がブチっと切れやすかったと推測された。
これは後から糸あわせをするときになって気づいた。
失敗は成功の元ですね!!

巻き取った紡錘1巻分、溜まると麻撚り機から外して、糸合わせ機へ
1巻きを調子にのってたくさんの量を巻いていたので、麻撚り機から糸がなかなか外せない。。。
しかも外し方がいまいち不明。なんせ50年ぶりに機械を動かしたので、
「これどうやって外したかなー」と先生方同士が打合せしながらの思い出しながらの作業でした。


●糸合わせの原理がやっと理解できた!(赤星)

ヨリをかけられた糸を48本、糸合わせ機に順々に糸をかけていった。
これを6回繰り返して、300筋。これを2つ合わせて1本という単位にする。

ここでは、1本の糸を2つ合わせて、畳糸にする。
2つをあわせる原理は、文章では説明しにくいが、糸合わせ機の右側についてる
滑車をまわして、48本の糸合わせ機に引っ掛けられた麻糸がそれぞれにぐるぐると回転。


回転のためのツヅミ(紐)が細かったり、つないで太くなったりして、なかなか
回転がスムーズに行くように成らなかった。1回目は強制的に手で直接回転させた。

ぐるぐると糸が回転すると同時に、左側にある重しの木材が上にあがっていって
、最後にソロバンの玉が落ちて作業終了という見事な仕組みであった。
そのソロバンの玉が6つ落ちると300筋となる。

糸合わせした麻糸は、コスリと呼ばれる稲ワラを木槌でやわらかくなるまで
しごいたもの(叩いたもの)をつかって、きれいに仕上げられた。
このコスリの作業は、次の工程に行くための仕上げであり、この熟練技術が
よい畳糸になるかならないかの分かれ目になるそうだ。

●糸合わせから次回の作業は?

本来ならは、ヨリして、糸合わせした麻糸は、次の日の朝5時から雪のうえで
寒晒をされる。今回はヨリ機と糸合わせ機がそもそも動くかどうかを調整するために実施した。
よって、糸合わせしたものは、本来なら、麻糸の保存する箱にいれた。
その箱は、湿らせた布を底に引いて、麻糸が乾いたりしてヨリが戻らないために実施する。
湿らせた箱の中に入れておくので、7日間もいれておくと糸が腐ってしまうので、
なるべく空気を入れないように蓋もしておいたという。

また、寒晒しできる日は限られるので、昔は、明日寒い日だとわかると、
徹夜で、夜中も麻撚り→糸あわせの一連の作業をやっていたそうだ。
こういう日になると夫婦同士の連携作業で、これが村の民謡歌にもなっている!!

とにかく、機械が動いたので、一同ホッとした。地元の先生方は「なつかしー!!」を連発していた。

今回は、寒いので、石油ストーブをガンガン焚いた部屋の中で実施したので、
糸あわせをしたものが、すぐにほどけた状態になってしまった。これはもう畳糸には使えない。。。
糸合わせをしたものは、乾燥が大敵。

次回は、ストーブをつけないで作業をします!
しかも、朝5時作業もあります。防寒対策は十分注意しなければなりません。

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